skinixの製品ができるまで

現場の想いをカタチにするまでの、熱い物語。

想いをチカラに CONCEPT

固定テープ自体をたんとかしないと、問題はなくならない。

尿道カテーテルやドレーン類の固定用テープ「クリアホールドライナー」。さまざまな試行錯誤を経て生まれたこの製品の開発の紆余曲折やエピソード、その背景となった熱い想いを伺いました。

(開発協力:伊藤WOC)
伊藤 みゆき さん 伊藤 みゆき さん

伊藤 みゆき さん

皮膚・排泄ケア認定看護師(WOC)

満足のいくものをつくりたいという気持ちで続けた、5年以上に渡る開発期間

ーー 最初にご要望をいただいてから6,7年になるでしょうか。
試行錯誤を何度も繰り返しながら長い間お付き合いいただき、ありがとうございます。
今日は今までボツになった試作品を持ってきました。

伊藤 ありがとうございます。本当に多くの種類の試作品を作ってもらいましたね。
(歴代の試作品を見ながら)

ーー 妥協せず、満足のいくものをつくりたいという気持ちで開発を続けてきました。
しっかりお話できる場所を、ということで喫茶店の会議室で打ち合わせしたこともありましたね。業務時間後に3時間以上も「ああでもない」「こうでもない」みたいな話で白熱して、気づいたらコーヒー1杯だけしか頼んでいなかったりとか・・・。

伊藤 結局、最初考えた形からはだいぶサイズがコンパクトになりましたね。
サイズが大きいと本当に貼りづらくて・・・(笑)コストも高くなりますし。
でも形は、途中で一度独特な方向に行ったあとで、結局、最初に近い感じに落ち着きましたね。

ーー ちょっと迷走していた時期がありました(笑)
結局、形は可能な限りシンプルな方が良いとなったんです。初めて使う人も、貼る手順をイメージしやすいですから。

テープ自体をどうにかしないと、皮膚トラブルの解決にはならない。

ーー そもそも、一番初めに声をかけていただいたとき伊藤さんが困っていたのは、既存の固定テープで起こる皮膚トラブルでしたね。

伊藤 そう、チューブを固定している間に、テープに沿って緊張性の皮膚トラブルが頻発していて。
報告書の写真だけでなく、実際にトラブルが起こっているのも見ましたが、明らかに緊張性水疱ができていて。
しかもびっくりしたのが、現場の看護師ができた横にまた同じテープを貼って固定しているんですよ。しかもそこでまた発生していて、じゃあまたその横に同じように貼るっていう。

ーー どんどん皮膚トラブルが増えていく・・・

伊藤 そう、「そのテープで固定する」っていう発想しかないから、同じようにトラブルが発生しているだけなんです。人の問題もありますけど、安全上、テープ固定はしないといけない状況なら、結局テープ自体をどうにかしないと解決にはならないと思いました。

ーー 皮膚トラブルが起こってしまうと、患者さんにも医療者側にも、大きな不利益ですよね。

伊藤 それは本当にそう思います。
私自身は急性期なので患者さんは鎮静鎮痛がかかっていることが多くて、どちらかと言うと看護師の管理面での手間が大きいことが課題でした。皮膚トラブルが起こるとそこから浸出液が大量に出るから、服を汚さないようにパッドを入れなきゃいけない。場合によってはもう数時間でビシャビシャになっちゃうんで、それを結局各勤務帯1時間おきとかに交換しないと・・・とか。ただこれは急性期の場合で、患者さんの意識がしっかりしている場合だったら当然苦痛へのケアも必要なわけで、やっぱり皮膚トラブルが起こらないのが一番良いですよ。

ジレンマを抱えながら、隅々までこだわった素材の選定

ーー そこで、皮膚にかかるストレスを少なくするために、まずは伸縮性の高いクリアホールド素材だけを使った試作品をつくりましたが・・・

(元になったクリアホールド)

伊藤 皮膚にはいいけど、伸縮性が高すぎてチューブが必要以上に動いちゃったり、ねじれのリスクが増えてしまって・・・伸縮性と固定力がトレードオフになってしまって、全然上手くいかなかったです。

ーー 皮膚にはやわらかい素材、でもチューブは保持するためにしっかりした素材。この両立は大きい壁でした。チューブをホールドするところに不織布素材を貼り合わせ、何とか両立を目指しました。ただ、今度はチューブへのくっつきが良すぎて・・・

伊藤 チューブにすごく糊残りしていた試作品もありましたね。

ーー そうなんです。一難去ってまた一難という感じで。結局、不織布素材自体にもこだわって、チューブをしっかり固定しつつも、糊残りは起こらない粘着剤のバランスを追及しました。

「誰が貼ってもオメガ留めになる形状」の追求

ーー さらにもうひとつ、伊藤さんからも強くご要望いただいていたのが「誰が貼ってもオメガ留めになる」っていう再現性のところでした。
やはりオメガ留めひとつを取っても、新人の看護師さんへの手技の教育については、課題があったということですか?

伊藤 そうなんです。こうするんだよって言って教えても、やってくれないんですよね。だって、現場で教える人が違うから。だから臨床に入れちゃうともうオメガ留めをしない。1年目で集合研修の時はオメガの指導はするんですけどね。

ーー 最初に座学的な場で、一応は習うと。

伊藤 そういう教えを受けても、結局臨床の先輩たちがやってない。どっちに従うんだ?ってなったら、そりゃ臨床の直属の先輩ですよ。
結局、オメガ留めが必要なのは頭でわかっていても、それをするのにかなり神経を使ったり手間がかかったりするからやらなくなっちゃう。
だから「誰が貼っても自然とオメガになる」のが重要なんです。

ーー 実際は、それを実現しようとしてかなり苦労しました。絶対にオメガになる形状を思いついても、そもそも貼る手順が多すぎてどう貼るのか分からなかったりとか。

伊藤 「手順を分かりやすくして」っていうのも、何度も要望しましたよね。一番に剥がして欲しいのは右の剥離紙なのに、左の方から剥がすこともできちゃう。そうすると、オメガがうまくできなかったりするから、じゃあこの形状はダメです!みたいな。色々言いました(笑)

ーー でも、そこに妥協してしまったら結果として良い製品にはならないですから。

伊藤 技術担当の方はいつも渋い顔をしながら、私の話を聞いてくださったのを覚えています(笑)でも、次回ちゃんと改良した案を考えて持ってきてくれましたね。

形になったからには、製品の良さをどう伝えるかにもこだわって欲しい。

ーー 色々ありながらもこうして形になって、いかがでしょう?

伊藤 形になって本当に良かったです。
後は、この良さを色んな人に知ってもらいたい。伝わらないことが嫌なんですよ。ただ単にフィルム素材を使っているから良いんじゃないんですっていうところ。伸縮性の良さが皮膚トラブル(のリスク低減)にどう結び付くか、というのを何とかして可視化して欲しいと思っています。

ーー 測定データの数字だけでなく、視覚にも訴えかけるような何かがあれば・・・

伊藤 本当にそうですよ。
パッケージデザインやネーミングとか、表に出る要素の見え方にもこだわって欲しいですね。いままでのskinixさんのカラーも大事にしながら。

ーー 肝に銘じます。
今後も現場の方とともに、期待にこたえられる商品を開発していきます。

※インタビュー実施日(2025年6月)時点での情報です。

クリアホールドライナー クリアホールドライナー

尿道カテーテル・ドレーン固定テープ
クリアホールドライナー

不織布のライナーで補強された部分がチューブをしっかり固定しながらも、やわらかなフィルムが肌へのやさしさも同時に実現。誰でもカンタンに高度な固定ができて、抜去や肌トラブルなどのチューブ固定に伴うリスクを軽減します。

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