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褥瘡は発生する前に対策を――。その思いから、日々多忙な業務の中でも、体位変換やスキンケアなどに取り組まれていることと思います。
そうした日々のケアをサポートする局所管理の一つとして、ドレッシング材が使われる場面も多いのではないでしょうか。
褥瘡対策として使用されるドレッシング材にはさまざまな種類があります。
今回は、それぞれの得意分野を整理しながら、近年注目されている資材の特長について解説します。
目次
●特長に応じたドレッシング材の使い分け
現在、褥瘡対策として使用されるドレッシング材の代表的なものとして、「ポリウレタンフィルム」「ハイドロコロイド」「シリコーン系粘着剤のポリウレタンフォーム(以下、シリコーンフォームドレッシング)」の3種類が挙げられます。
これらは現場で広く使用されている資材ですが、それぞれ異なる特長を持っており、患者さんの状態に応じた使い分けが重要となります。
ポリウレタンフィルム:
非常に薄く表面の滑り性が高いため、「摩擦」から保護できます。また、透明なため貼付したまま常に皮膚を観察できるのが利点です。
ハイドロコロイド:
表面の滑り性が高いため、「摩擦」から保護できます。また、フィルムに比べて厚みがあるため、皮膚組織にかかる「ずれ力」の影響を緩和します。
シリコーンフォームドレッシング:
ポリウレタンフィルムやハイドロコロイドに比べてフォームに厚みがあるため、優れた「圧力」分散効果を発揮します。さらに、シリコーン系粘着剤を使用しているため、肌にやさしく貼りはがしできることも大きな特長です。
●シリコーンフォームドレッシングの推奨度と、その根拠となるエビデンス
これら3種の中でも、近年、褥瘡対策における使用が多く報告されているのがシリコーンフォームドレッシングです。
『褥瘡予防・管理ガイドライン(第5版)』では、以下のように紹介されています。
この高い推奨度の背景には、以下のような臨床研究の具体的な結果があります。
・高齢の股関節骨折患者を対象とした試験
通常ケアのみのグループの褥瘡発生率が15.4%であったのに対し、多層構造のシリコーンフォームドレッシングを仙骨部に貼付したグループは4.5%へと有意に減少したと報告されています。(※1)
・高齢者施設における褥瘡高リスク患者(※)を対象とした試験
通常ケアのみのグループの褥瘡発生率が10.7%であったのに対し、多層構造のシリコーンフォームドレッシングを仙骨部および踵部に貼付したグループは2.2%へと有意に減少したと報告されています。また、相対的リスク減少率は80%という高い数値が導き出されています。(※2)
(※ ブレーデンスケール12点以下)
●なぜ発生率が下がるのか? その鍵を握る力学的メカニズム
シリコーンフォームドレッシングが推奨度1B(強い推奨,中程度の根拠)とされる理由は、褥瘡の主要な外的要因である、圧力・ずれ力にアプローチできる点にあります。
・圧力の分散
厚みのあるフォームが、骨突出部にかかる局所的な「圧力」をより広い面積に分散させます。これにより、毛細血管の圧迫を軽減し、細胞への酸素と栄養の供給を継続できるため、褥瘡の発生リスクを減らす効果が期待できると報告されています。
・ずれ力の吸収
ベッドの背上げなど自重が移動した際に発生する「ずれ力」は、皮膚内組織のずれ・断裂を引き起こすことがあります。
前述の研究で使用されたシリコーンフォームドレッシングは、フォームが多層構造になっています。この各層が互いにスライドすることで、皮膚深部に伝わる「ずれ力」を吸収する仕組みです。
●ケアの質を高める、シリコーン粘着剤
シリコーンフォームドレッシングは外力に対応する性能だけでなく、肌へのやさしさや扱いやすさにも大きな利点を持っています。
シリコーン粘着剤は、剥離時に肌を傷つけにくいため、頻繁な貼りはがしが可能です。
これにより、褥瘡対策において欠かせない「皮膚の観察」を日常的に行いつつ、剥離時の刺激による新たな損傷(スキン-テア等)のリスクを最小限に抑えられます。
●シリコーンフォームドレッシングの課題
褥瘡の主要な外的要因に対応でき、肌へのやさしさや扱いやすさも備えたシリコーンフォームドレッシング。一見すると、メリットばかりの万能な製品に思えるかもしれません。
しかし現場では、「貼ったまま肌が観察できない」ことや「コストが高い」といった資材特有の性質や運用の壁に直面することもあります。
どんなに優れた資材であっても、こうした特有の課題は必ず存在するのです。
●患者さんのためにも、現場のためにも。これからの「資材選択」
ここまで、褥瘡対策としてよく使用される3種のドレッシング材、特にシリコーンフォームドレッシングについて解説しました。
結論としては、すべてを解決できる万能な資材はないということです。
だからこそ、それぞれのドレッシング材の特長を正しく理解し、患者さんや施設、スタッフの状況に合わせて、最適な材料を選択することが重要です。
もし、今の対策方法で限界を感じていたり、現場の負担が重くなっていたりするのなら、資材の選択肢を広げてみることも有効な手段かもしれません。
この記事の内容が、その際の参考になれば幸いです。
●シリコーンフォームドレッシングの課題に向き合った専用パッド「プレスワイプ」
プレスワイプは、褥瘡対策に必要な圧力分散性能はもちろん、「貼ったまま肌が観察できない」「コストが高い」といった現場の運用課題にも目を向けて設計されました。
貼ったまま観察はできなくても、シワになりにくく貼り直しが容易なため、「頻繁に貼りはがして日常的に観察する」というケアを無理なく継続できます。
これにより、スタッフの熟練度を問わず、誰でも高いレベルの対策を均一に提供できるようになります。
さらに、必要な材料のみに厳選することで、導入しやすい低価格を実現し、「貼って対策」の標準化に貢献します。
参考文献:
※1 Forni C, D’Alessandro F, Gallerani P, et al: Effectiveness of using a new polyurethane foam multi-layer dressing in the sacral area to prevent the onset of pressure ulcer in the elderly with hip fractures: A pragmatic randomized controlled trial. Int Wound J, 15 (3) : 383-390, 2018.
※2 Santamaria N, Gertz M, Kapp S, et al: A randomised controlled trial of the clinical effectiveness of multi-layer silicone foam dressings for the prevention of pressure injuries in high-risk aged care residents: The Border III Trial. Int Wound J, 15(3) : 482-490, 2018.
