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【専用テープで検証】ドレーンチューブ固定|テープの“2枚貼り”は本当に効果がある?
●ドレーンチューブ固定|現場でどのように固定していますか?
皆さんはドレーンチューブ固定において、このようなテープを“2枚並べて固定する方法”をご存じですか?
「ドレーンチューブの抜去は、特に命に関わる行為だから絶対に起こしたくない。でも固定テープ1枚だけでは抜去が心配…。だからテープ2枚貼りでしっかりと固定したい」
そのような理由から、テープを2枚並べて固定されている看護師さんもおられるのではないでしょうか?
そこで今回は、専用テープの「クリアホールドライナー」を使用し、1枚貼りと2枚貼りでどれほど固定力に差が出るのかを検証してみました。
●【検証】専用テープの1枚貼りと2枚貼りで固定力を比較
「クリアホールドライナー」でチューブを固定し、 1枚貼りと2枚貼りで固定力の違いを比較しました。
[検証条件]
◆2枚貼りは、2枚の間隔を –5 / 0 / 5 / 10 / 20 / 30 mm の6パターンで実施
※–5mmは、牽引側テープがもう一方に5mm重なる状態
◆以下の二条件で測定
①チューブを平行(0°)に引っ張った場合
②チューブを垂直(90°)に引っ張った場合
※試験板:SUS#304、貼付時間:5分、牽引速度:500mm/min
【6パターンの画像】
【引張試験の様子】

●【結果】2枚貼りは1枚貼りより固定力が上がる?
以下は1枚貼りと2枚貼りの最大引張力(固定力)を比較した表とグラフです。
※数値が大きいほど引張力が大きく、テープの固定力が高いことを示しています。
【最大引張力の比較表】
【検証結果グラフ】

▼平行(0°)方向に引っ張った場合
平行方向では、2枚貼りは1枚貼りより固定力が高いという結果がわかりました。
これは、平行に引っ張った場合に2枚のテープそれぞれに力がかかるため、1枚貼りよりも高い固定力になったと
考えられます。
実際に、1枚貼りと2枚貼りの「0mm」を比較すると、平行(0°)方向に引っ張った場合は、固定力が約2倍に向上する結果となりました。
【1枚貼りと2枚貼りの0mmの比較グラフ】
一方で、2枚貼りのテープ同士の距離を近づけても離しても、固定力は大きく変わらない結果となりました。
▼垂直(90°)方向に引っ張った場合
垂直方向では、2枚貼りの最大応力は1枚貼りより「わずかに高い程度」という結果となりました。
これは、垂直方向では引っ張る力が主に1枚目のテープにしか集中せず、2枚目のテープに十分な力が伝わらないためだと考えられます。
そのため、最大応力(数値)だけを見ると、2枚貼りの効果は限定的に見えますが、2枚貼りの場合は、1枚目のテープが剥がれても、完全に固定が失われないという点では、安全面・安心感という意味でのメリットはあるのではないでしょうか。
●まとめ
今回の検証から、2枚貼りの効果は「貼っている枚数」だけでなく、「引っ張る方向」によっても大きく変わることがわかりました。
一方、現場では、チューブがどの方向からどれだけ引っ張られるかを事前に予測するのは難しいため、1枚貼りより2枚貼りのほうが“抜けにくさ”という点で安心材料になる可能性があります。
ただし、「2枚貼りだから安全」と過信せず、今まで通り「適切な固定」と「観察」を続けることが重要です。
今回の記事が、ドレーン抜去対策を見直す際の一つの参考になれば幸いです。
※上記データは代表値であり、保証値ではありません。
