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予防しているのに、なぜ発生する?脊柱部褥瘡のリスクと予防的アプローチ
体圧分散マットレスの導入や体位変換の徹底など、予防をしっかり行っているのに褥瘡が発生してしまう、ということはありませんか?
そういった課題に直面しがちな部位の一つが、「脊柱部」です。
脊柱部は、予防の難しさに加え、発生頻度や重症化のリスクも高く、注意が必要な部位と言えます。
日本褥瘡学会実態調査委員会報告(2021年)によると、一般病院での自重関連褥瘡の有病率において、「脊椎部」は第5位(5.5%)にランクインしています。
(※学会の集計データにおける表記「脊椎部」をそのまま引用しています。)

さらに、一度発生すると骨髄炎など重篤な合併症を招くこともあり、決して軽視できない部位です。
今回は、なぜ脊柱部の褥瘡は発生しやすく、かつ予防が難しいのか、その構造的な理由と現場で実践できる予防のポイントについてご紹介します。
目次
●脊柱部褥瘡の解剖学的な発生メカニズム
脊柱部は、皮膚から骨までの距離が非常に近く、骨を覆う筋肉や皮下脂肪などの軟部組織が極めて薄い部位です。それに加え、血流が行き届きにくい部位でもあるため、外部からの圧迫により虚血状態になりやすいという特徴があります。
このように、外部からの圧迫やズレ力が加わると内部に伝わりやすく、また血流自体も乏しいことから、褥瘡が発生しやすい部位と言えます。
●脊柱部褥瘡のリスクを高める3つの要因
どのような患者さんで脊柱部褥瘡のリスクが高まるのか、現場で注意すべき主な特徴を整理します。
・るい痩:
皮下脂肪や筋肉の減少により骨が突出するため、圧力が一点に集中しやすくなります。
これは、脊柱部に限らず、全身の褥瘡リスクを高める要因です。
・脊椎変形(円背など):
加齢、骨密度の低下、椎骨圧迫骨折などによって脊椎が曲がると骨が突出し、仰臥位などで背部が接する際に特定の棘突起に体重が極度に集中します。
・脊髄損傷:
運動麻痺によって車いすやベッド上での姿勢保持が困難になり、曲がった姿勢が定着することで脊椎変形をきたし、特定の骨に体重が集中しやすくなります。
このように、るい痩や骨変形などによって棘突起が著しく飛び出した状態を病的骨突出と呼びます。
体圧分散寝具やポジショニングだけでは圧を逃がしきれない可能性があり、極めてハイリスクな状態といえます。
●脊柱部褥瘡がもつ重症化リスク
脊柱部の褥瘡は「骨までの距離が極めて短く、棘突起に圧が集中しやすい」という点で、非常に危険度の高い部位です。
皮膚から骨までの距離が近いため、一度発生すると急速に組織深部へ侵食し、容易に骨が露出してしまいます。
そこに感染が及ぶと難治性の骨髄炎や化膿性脊椎炎を併発する恐れがあります。
さらに、血流を介して全身へ細菌が波及すると、敗血症などの全身性感染症を引き起こし、生命の危機を招く深刻なリスクにつながります。
●脊柱部褥瘡の予防が難しい理由
褥瘡の発生・重症化リスクを把握していても、実務上では以下のような課題から予防が困難なケースが少なくありません。
・ポジショニングや体圧分散の限界:
重度の円背や病的骨突出がある場合、体圧分散マットレスなどを使用しても、棘突起の突出が強すぎて圧を軽減しきれないことがあります。
・体位変換の制限:
呼吸障害や心肺機能の低下により側臥位への体位変換が困難なケースや、関節拘縮により仰臥位を固定せざるを得ない場合があります。
規則的な体位変換という基本ケアそのものが物理的に行えないという実情があります。
・同時多発リスク:
脊柱は複数の椎骨が垂直に連なっている構造のため、背骨のラインに沿って複数の棘突起部に褥瘡が同時多発しやすい特徴があります。
限られた資材や人手の中で複数箇所を同時に保護しなければならない点が、予防をより困難にしています。
●脊柱部褥瘡の予防アプローチ
このように管理の難易度の高い脊柱部褥瘡ですが、現場ではどのようにアプローチすべきでしょうか?
① 全身管理:
褥瘡予防においては、患者さんの状態や環境に応じた予防方法を検討することが重要です。
脊柱部はケアが難しい部位ですが、まずはチーム全体への教育と、できる範囲での体位変換から始めることが予防への第一歩となります。

② 局所保護のためのドレッシング材活用:
体位変換や体圧分散寝具だけでは圧力や摩擦・ずれを軽減しきれない場合の有効な選択肢として、あらかじめ骨突出部へドレッシング材を貼付して保護する方法があります。
・ポリウレタンフィルム:
骨突出部へ貼付することで、皮膚表面を保護し、「摩擦やずれ(ヨコ方向の力)」を予防します。
ただし、自重による持続的な「圧力(タテ方向の力)」を軽減することはできません。

・シリコーンフォームドレッシング:
優れたクッション性を持ち、持続的な「圧迫(タテ方向の力)」を軽減・分散すると同時に、「摩擦やズレ(ヨコ方向の力)」も軽減・分散します。
この優れた体圧分散性能と肌へのやさしさから、日本褥瘡学会のガイドラインでも高く推奨されています。
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日常的なケアにはポリウレタンフィルムを取り入れ、病的骨突出が見られるハイリスクな患者さんにはシリコーンフォームドレッシングを使うなど、状態に応じた使い分けも重要です。
現場でよく用いられるドレッシング材の種類と特徴の違いについては、以下の記事でまとめています。ぜひご覧ください。
褥瘡対策|ドレッシング材はどう選ぶ?場面に応じた使い分けと、シリコーンフォームドレッシングの推奨の背景
●正しい理解と適切なケアで脊柱部褥瘡を予防する
難易度の高い脊柱部褥瘡の予防。
しかし、解剖学的な特徴と発生リスクを正しく理解し、スタッフ全員による「全身管理」と、患者の皮膚状態に合わせた「局所予防」を行うことで、発生リスクを大きく下げることができます。
本記事が、褥瘡予防や製品選びの際の参考になれば幸いです。
●脊柱部の特性に合わせたドレッシング材
患部のみをピンポイントで覆う「治療」とは異なり、「予防」においては発赤や圧迫のリスクがあるエリア全体を漏れなくカバーする必要があります。
特に脊柱は垂直に長く骨が連なっているため、点ではなく面で広く保護しなければなりません。
しかし、ドレッシング材を何枚も貼り合わせて広範囲を覆おうとすると、シワや隙間ができやすく、貼付の手間もかかります。
そこで、「プレスワイプ」は脊柱部の形状に合わせた長方形サイズをご用意しています。
優れた体圧分散性能を持つシリコーンフォームドレッシングのため、病的骨突出による圧迫も軽減しながら、複数枚組み合わせることなく、これ一枚で褥瘡発生リスクのある部位を覆うことができます。
脊柱部のラインに沿って貼るだけで、誰でも簡単に予防ケアを実践できます。
ドレッシング材自体に体圧分散性能はあまり必要ないものの、摩擦やズレから皮膚を保護し褥瘡を予防したい場合は、ポリウレタンフィルム「エアウォールふ・わ・り」の活用が有効です。
骨突出部に貼ることで、摩擦やずれといった外的刺激から皮膚を保護し、高い透湿性と角質剥離を起こさない独自の粘着剤により、褥瘡発生のリスク要因であるムレやテープ剥離時の皮膚トラブルを未然に防ぎます。

